お引越しのシーズンが到来。そして、私の脳内をよぎるのは、映画「お引越し」(1993)なのであります。この映画は、春の新生活に向けての輝かしいお引越しの物語ではなく、 離婚を前提に別居する両親を持つ11歳の少女の物語。別居というとネガティブな印象かもしれませんが、主人公の少女の成長する姿に、我を重ね、一歩を踏み出したくなります。お子さんがいらっしゃる方は、親視点でも楽しめる映画です。
生んでくれて、ありがとうで ばかやろう。
ある日、小学6年生のレンコの両親は、離婚を前提に別居。父が家を出て行き、母と二人暮しとなったレンコは、勝手なことばかり言う両親の間に挟まれ、納得がいかない…。なんとか両親の仲を戻そうと、昨年も行った琵琶湖畔への家族旅行を強引に計画するが…。
◆昨日までの自分に、さようなら~。そんな気持ちに!!
子供にとっての正論をぶつけたところで、大人からの答えは返ってはこない。レンコの心は、淋しさ、怒り、ショック…で、繊細に揺れ動きます。でも、徐々に目の前の現実を受け入れていきます。妥協ということではなく、受け入れていくということ。それが、大人になるということなのかもしれません。 「昨日までの自分に、さようなら~。」「今日からの自分で、こんにちは~。」そんなふうに、ポジティブな気持ちになる映画です。
◆相米慎二監督。巧みな表現は、別格!!
人の感情という微妙なものを映像化する技。特に、注目していただきたいのは、水。激情の激しい雨や、優しく包み込むような湖。そして、その音色。登場人物の心情を映し出しているかのようで、作家性の強い表現に吸い込まれます。
◆ド素人の女の子、田畑智子さんのデビュー作!!
京都の小学6年生・田畑智子さんが、オーディションで選ばれ、ド素人にも拘わらず抜擢。厳しい相米監督の演出に負けない役者根性は、圧巻です。そして、父親役の中井貴一さん、母親役の桜田淳子さんの父母役の組み合わせは、お宝映像です。
他にも、相米監督の映画を配信中。
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